医師に大切なこと
1. 人間性,2. 理解力,3. フットワーク,4. 感性
研修医の皆さん 手に負えない急性期は 救急科専門医に相談しましょう。 

ER皮膚診察でのカルテ記載
皮膚カルテ記載注意事項 1 LinkIcon戻る

Q1: 皮膚疾患をどう記載すると良いのですか:緊急ではないので明日皮膚科へと記載したら怒られました!



救急外来における皮膚の所見の書き方
研修医の進化:皮膚病変については,必ずデジタルカメラに残すようにして下さい。朝のERカンファレンスでも,再評価します。

基本 「発疹」というtechnical termを使用すること皮膚異常の詳細な評価ができない際には,「発疹」という用語を用いて下さい。病変の種類を「一次的形態」,形状を「二次的形態」と呼びます。また,皮膚についての記載は,①質感,②分布,③色調を必ず含めて記載して下さい。

進化系研修医

STEP1 単純性か多発性かを記載すること

発疹が存在するのは,特定の部位なのか(単純性),多発しているのか(多発性),この記載を必ずカルテに残して下さい。

ポイント

1.手掌・四肢:露出部分
2.体幹:非露出部分,背側あるいは全面
3.頭部
4.口腔内
5.陰部:問診で良い,必要であれば評価追加

注意事項:顔面の露光部皮膚,特に前額,鼻,耳介腔の病変は,慢性皮膚エリテマトーデスや日光湿疹の特徴です。化膿性汗腺炎は,腋窩および鼠径部などアポクリン腺を高密度に含む皮膚に生じます。乾癬は,頭皮,肘と膝の伸側,臍部,殿裂に多発性に生じることが多いです。扁平苔癬は,手首,前腕,外陰部,下腿に生じることが多いです。白斑は,四肢の遠位部および顔面に,斑状かつ孤立性に,または集簇して発症することがあります。

STEP2 一次的形態について記載しましょう

皮膚病変の種類を,表現したい時の参考としてください。

1.班「斑」は,平坦で触知できない発疹であり,直径は通常10mm未満です。斑は,色調や表面の質感の変化のことであり,大型の斑をパッチと呼びます。雀卵斑,刺青,ポートワイン血管腫,リケッチア感染の発疹,風疹,麻疹,一部のアレルギー性薬疹などが,班を示します。

2.丘疹「丘疹」は,直径は通常1cm未満の隆起性病変で,もちろん,触知できます。母斑,疣贅,扁平苔癬,虫刺症,脂漏性角化症,日光角化症,ざ瘡病変,皮膚癌などです。

3.局面「局面」は,触知できる病変として直径が1cmを超えて,皮膚表面から隆起しています。乾癬や環状肉芽腫は,局面として隆起しています。

4. 結節 「結節」は,硬い丘疹病変で,真皮または皮下組織まで広がっています。嚢腫,脂肪腫,線維腫が,代表的です。

5.小水泡「小水疱」は透明な液体で満たされた直径1cm未満の小型水疱です。ヘルペス,急性アレルギー性接触皮膚炎,ある種の自己免疫性水疱性疾患が代表的です。

6.水疱「水疱」は,透明な液体で満たされた直径1cmを超える水ぶくれです。熱傷,虫刺症,刺激性触皮膚炎,アレルギー性接触皮膚炎,薬疹などを考えます。古典的な水疱性疾患として,尋常性天疱瘡と水疱性類天疱瘡を考えます。

7.膿胞「膿疱」は,膿を含んだ隆起性病変です。細菌感染,毛包炎,膿疱性乾癬などの炎症を考えます。

8.蕁麻疹「蕁麻疹」は,浮腫性の隆起性病変です。この膨疹,薬剤過敏症,虫刺症,虫咬症,自己免疫性疾患,温度,圧迫,日光などの物理的刺激でも生じます。

9.鱗屑(りんせつ)「鱗屑」は,角層上皮が厚く堆積したもので,乾癬,脂漏性皮膚炎,真菌感染などで見られます。慢性皮膚炎は,鱗屑を伴うことに注意します。

10. 痂皮(かひ)「痂皮」は,乾燥した血清,血液,または膿からできていて,炎症や感染で生じます。

11. びらん「びらん」は,表皮あるいは全層の欠損で生じたビラビラした皮膚の創面のことです。外傷以外にも,炎症や感染でも生じます。

12. 「潰瘍」は,表皮と真皮の一部が欠損して生じます。静脈うっ滞,血管障害,感染症,血管炎などの血流障害を念頭に置きます。

13. 「点状出血」は,点状の出血巣であり,押しても消退しない特徴があります。血小板異常,血管炎,敗血症性DICを念頭におきます。

14. 「紫斑」は,比較的大型の出血です。押しても色調が消えません。触知可能な紫斑は,白血球破砕性血管炎の特徴的所見です。紫斑では,凝固障害の有無を評価します。血液・生化学検査では,「凝固異常の疑い」として,凝固・線溶系の評価を含めます。

15. 「萎縮」は,皮膚が菲薄化し,乾燥し,シワが寄った外観となります。文字通り,皮膚が乾いた状態として,萎縮している所見です。慢性的な日光暴露,加齢,炎症後や腫瘍性皮膚疾患で生じます。

16. 「瘢痕」は,皮膚が損傷を受けた後に線維化が生じて,繊維組織が正常皮膚と置き換わったものです。一方,ケロイドは肥厚性の瘢痕に対して用います。ケロイドは,もともとの創縁を越えて,拡大する肥厚性瘢痕のことです。

17.「毛細血管拡張」は,毛細血管が拡張した細い血管として確認できる皮膚病変です。ほとんどは特発性ですが,強皮症などの免疫膠原病,遺伝性疾患(例,毛細血管拡張性失調症,遺伝性出血性毛細血管拡張症),長期間のステロイド投与で生じることに注意します。

STEP3 二次的形態の評価を記載しましょう

形状の記載をするようにして下さい。皮膚病変については,必ずデジタルカメラに残すようにして下さい。
君たちのまず最初の評価が大切です。

 1.網状病変 カルテ記載例:発疹は,網状病変はレース状であり,網目状の2次形態だった。大理石様皮膚,網状皮斑,末梢循環不全を鑑別します。
 2.疱疹状病変 カルテ記載例:1)発疹は,丘疹が集落を形成したような疱疹状の2次形態だった。2)発疹は,小水疱が集落を形成したような疱疹状の2次形態だった。帯状疱疹,薬疹,局所感染などを鑑別します。皮膚知覚帯(デルマトーム)に沿った配列であれば,帯状疱疹の可能性が高いと評価します。
 3.線状病変 カルテ記載例:発疹は,直線上の線状形態と評価した。接触皮膚炎,線状表皮母斑,線状苔癬を鑑別します。
 4.蛇行状病変 カルテ記載例:発疹は,曲線状で分岐する2次形態だった。皮膚の真菌症や寄生虫感染症(皮膚幼虫移行症)を鑑別する。 
 5.環状病変 カルテ記載例:発疹は,中心治癒を伴う輪状の桿状病変と評価した。薬疹,環状肉芽腫,状菌感染症(たむし),二期梅毒などを鑑別します。
 6.貨幣状病変 カルテ記載例:発疹は,硬貨の形をした貨幣状病変は円形病変だった。貨幣状湿疹を考えます。
 7.標準状病変 カルテ記載例:発疹は,中央が濃色の輪状病変であり,虹彩のようであり,多形紅斑の特徴的所見だった,など。
 8.臍窩状病変 カルテ記載例:発疹は,中央に凹みのある直径約7mmの臍窩状病変だった。鑑別:伝染性軟属腫,単純ヘルペスなどのウイルス性病変
 9.ビロード状病変 カルテ記載例:発疹は,表面が不規則でときにビロード状だった。 鑑別:疣贅,脂漏性角化症

STEP4 色調(視診)と質感(触診)の追加評価を記載しよう

1.色調

留意内容

 1)赤い 赤色調は,発赤として,炎症性または感染性疾患を考えます。ポートワイン血管腫のように,表在性の血管病変は赤く見えます。
 2)オレンジ色 オレンジ色の皮膚は,βカロチンを食事で過剰摂取した後に生じる良性のカロチン沈着状態です。
 3)黄色 黄色は黄疸,眼瞼黄色腫,黄色腫,弾力線維性仮性黄色腫,そして局所にとどまる単純性丘疹であれば黄色ブドウ球菌観戦を考えます。
 4)緑色 緑色の隆起や爪内は,緑膿菌を考えます。炎症所見がなければ,問題ありません。
 5)紫色 紫色の皮膚は,皮膚の出血または血管炎を考えます。ライラック色の眼瞼である “ヘリオトロープ”疹では,皮膚筋炎を疑います。
 6)黒色 黒色の皮膚病変は,色素性母斑や黒色腫のように色素細胞性のことがあります。黒色痂皮は,血管梗塞を考えの原因として考えられるものに,感染症(例,炭疽,リゾプスを含む血管侵入性真菌,髄膜炎菌血症),カルシフィラキシス,動脈不全,血管炎がある。
 7)その他
 青色調,銀色調,灰色調の皮膚は,ミノサイクリン,アミオダロン,銀(銀皮症)などの薬物や金属が皮膚に沈着して生じることがある。虚血性の皮膚の色調は紫色から灰色である。真皮深部の母斑は青くみえる。

2.質感

ERに備え付けている薄手のビニール製手袋で,触診をして下さい。
指先・第1関節以上・第2関節以上・手掌の4段階を使い分け,手袋と皮膚の感覚が一致するまで,手の感覚を鍛えて下さい。
1)ビロー触知様:表面が不規則で凸凹感覚 カルテ記載例:質感は,表面が不規則でときにビロード状だった。 鑑別:疣贅,脂漏性角化症

2)苔癬化苔癬化は,正常の皮膚紋理が増強した皮膚の肥厚である;この変化は繰り返し擦ることで生じる。

3)硬い皮膚深部の肥厚として硬結が生じます。これは,炎症,浮腫,悪性腫瘍浸潤を考えます。硬結は,脂肪織炎,皮膚感染症,悪性腫瘍の皮膚転移などの皮膚疾患の特徴です。

3.その他の臨床徴候:That’s 学生時代
医学生時代はすらすらと説明できた内容でした。今はどうでしょうか?

1)皮膚描記症 
 皮膚描記症は,皮膚を擦った後に皮膚に出現するじんま疹様の膨疹です。正常人の5%が皮膚描記症を示します。これは物理的じんま疹です。

2)ダリエ徴候 
 ダリエ徴候は,病変をこすったときに膨れる現象です。色素性じんま疹,肥満細胞症で生じます。

3)ニコルスキー徴候 
 ニコルスキー徴候は,中毒性表皮壊死剥離症,自己免疫性水疱性疾患で,皮膚をずらすように圧迫すると生じる表皮剥離です。

4)アウスピッツ徴候 
 アウスピッツ徴候は,乾癬(感染)の局面から鱗屑(りんせつ)を剥がすと点状の出血を生じる現象です。

5)ケブネル現象
 ケブネル現象は,引っかいたり,擦ったり,損傷を受けた部位などに病変が生じる現象のことです。乾癬,扁平苔癬でもこうした症状が出ます。



救急科長 教授 松田直之,内容提案:日下琢雅(研修医教育担当)

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