救急医療(Emergency Medicine)と集中治療(Critical Care Medicine)は,急変した状態の病状(急性期病態)を捉え,診断と治療を行なう医学の専門学術領域です。現在,超急性期管理医学と定義されています。当教室は,大学院講座として,この救急医療と集中治療の「病態学」,「診断学」,「治療学」をまとめ,発展させることを目標としています。
 心肺停止,内科疾患急変,交通外傷,熱中症,低体温症,急性心筋梗塞,急性膵炎,急性肝不全,広範囲熱傷などの様々な病態は,突然にやってきて,その初期対応を救急医療が,継続した急性期重症管理を集中治療が担います。このために必要な救急科専門性としては,「救急科専門医」および「集中治療専門医」の2つのライセンスを取得できる教育プログラムが必要です。2017年度より,救急科専門医育成のための教育プログラムを,地域の救急3次医療施設とともに育成できるものとして,日本救急医学会の指導下で作成しました。
 救急医療を学術して発展させ,さらに院内外での「急性期医療の質と安全管理」の基盤を提案することにより,より一層の救急医療と集中治療の救命率を高め,社会貢献することを大学講座としての目標としています。




名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野は,救急医学,集中治療医学,災害減災医学における救急科専門医,集中治療専門医,そして,急性期研究者と急性期指導者を育成する教室です。医学領域においては,診療を基盤として,教育と研究を発展させる,「診療」,「教育」,「研究」の三位一体が重要です。救急・集中治療医学分野においても,急性期管理医学に関する診療,教育,学術,研究,さらに急性期医療システムの発展や躍進に貢献し,本領域の専門家を育成し,救急医学と集中治療医学を国内外の有識者とともに牽引することが必要とされています。

1.診療:救急科専門医・集中治療専門医など
  方法:救急外来(ER)における多彩な症例対応と診療指導,集中治療室(ICU)内での主担当医としての重症管理,連携マグネット病院での診療における自己診療力の客観的評価を基本として,診療経験に考察を加えています。現在,救急科専門医や集中治療専門医になるための診療経験のハードルは,とても高いものとなっていますので,一通りの診療ができる体制を「仕組み化」することが不可欠となっています。
  実績:2011年より2016年まで,各10名を超える救急科専門医と集中治療専門医を育成しています。

2.教育:医学生への授業・研修医への授業・看護学校への授業・消防学校等への授業
  方法:院内の仕事(診療・教育・研究)を優先課題とし,院外OFF-the-Jobを実践することでの診療教育の基盤としています。院内シュミレーションセンターの活用UP企画の完成(2014年4月〜2016年3月),2016年4月からのシュミレーションセンターにおける手技・診療シナリオの開発と応用(MEIDAI救急ブートキャンプとして3月に運用中)。ERコースディレクター教育の開始。心肺蘇生の指導的立ち位置(ICLSコースディレクター,インストラクター)として,院内外の医療安全に寄与できる人材を育成します。この教育スタイルは,2014年より,助教にコーディネートさせる「仕組み化」制度を導入しています。
  実績:① 留学生受け入れ:2012年より,毎年,3名を超える海外留学性を受け入れ,国際的教育活動を展開しています。② 医学部における救急医学の授業の充実化を計りました。③ OFF-the Jobトレーニング:2015年からのMEIDAI救急ブートキャンプ(救急基本診療トレーニングコース)の開講などの教育システムを「仕組み化」する段階にあります。

3.研究:講座としての救急・集中治療医学の全テーマ解析,能力成長度に応じたテーマ配分
  方法:データベース管理(年間委託方式),論文発表,学会発表(国外・国内),以上を教授・講師・助教・医員の組み合わせで運用し,医局内討論として,研究を育てる。この過程で,急性期管理領域の診療力・教育力・研究力のある人材を育成する。現在,名古屋大学では助教・講師・准教授・教授は,毎年の研究計画を立てることが義務となっており,研究費を応募することも義務となっています。臨床研究は,臨床研究拠点病院としての適切な倫理基準の下で施行されるため,厳格な臨床研究として定義されます。
  業績:救急医学領域に,臨床と研究の両立したものを育成する目的で,2012年より研究生,大学院生を受け入れ,2017年3月までの段階で3名の学位取得者(医学博士)が誕生しました。





 急性期医療の病態と診療を学ぶ過程で,当講座は救急医療,集中治療,災害医療の3領域の「教育」と「診療」と「システム」を理解し,伝承できる人材を育成します。この過程で,日本救急医学会救急科専門医・指導医,日本集中治療医学会専門医を取得,あるいは維持することを目標とし,日本にとどまらずに世界に発信でき,世界の先端で活躍できる人材を育成することを目標とします。現在,日本救急医学会救急科専門医は,日本専門医制評価・認定機構の認定する第1類の基本領域の専門医として独立した専門医領域です。救急科専門医を育成する過程で,救急医学領域の「教育」と「研究」への進展に尽力します。救急医学領域に求められている専門性を提供できる人材を育成することを目標とします。



 Emergency & Medical ICU(EMICU)は,救急・集中治療専従医システムにより,集中治療の専門性と責任性を提供しています。現在,集中治療は日本専門医制評価・認定機構の認定する第2類の専門領域として運用されています。集中治療専門医を,育てていくことを目標としています。集中治療領域では,診療エビデンスの拡充に加えて,データベース作成を重視しています。データベースについては,個人情報管理を徹底するとともに,適切なモニタリング者を内部に設置し,厳格な管理として審査を受けながら進行させています。



 救急・集中治療体制の構築の一方で,当教室は名古屋大学本学に設置された減災連携研究センターと連携し,地域や日本に災害減災医学を推進させることを特徴とします。さまざまな地域の災害や,東南海地震・3連動地震などの震災に備えて,環境学,地盤工学,建築学に医学部が連動して,減災連携研究センターとして共同研究体制が稼働しはじめています。このような多角的分野の総力により,広域災害に対しての対応を平時の救急医療と併設して進展させたいとしています。



 現在,急性期医療や急性期管理システムを学術として,よりシンプルなものにまとめ上げていく学術や方法論が求められています。そして,世界に広く発信し,急性期管理医学の学術を提供することが必要な時代です。急性期管理医学の専門家を「教育」と「研究」の側面からも育成することが求められる教室です。