医師に大切なこと
1. 人間性,2. 理解力,3. フットワーク,4. 感性
研修医の皆さん 手に負えない急性期は 救急科専門医に相談しましょう。 

感染症管理で注意すること
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Q1: インフルエンザワクチンで留意すること

2014/2015シーズンのインフルエンザワクチン株について
 WHOはの2014/15シーズンの北半球用の推奨ワクチン株は,前シーズンの株のA/H3N2を変更した以下の3価ワクチンです。日本は,このWHO解析と厚労省流行予測事業のインフルエンザウイルス抗体保有調査成績などから以下の3株の3価ワクチンを本シーズンのインフルエンザワクチンとしています。A型およびB型にも対応できるよういなっています。
1)A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
2)A/ニューヨーク/39/2012(X-233A)(H3N2)
3)B/マサチュセッツ/2/2012(BX-51B)(山形系統)
一方,本年のインフルエンザウイルス感染症は,A型では鼻汁等の上気道炎症状と関節痛,B型では腹痛・嘔気などの消化器症状を合併しているようです。2014年11月の最終週で検出されている主株は,A型ではAH3株,B型ではビクトリア系統ではなく山形系統です。B型インフルエンザは,日本におけるこの数シーズンは山形系統とビクトリア系統の2種類の混合流行のようです。米国では両系統のB型ワクチンとした4価ワクチンの導入が開始されているようです。日本でも,平成27年度から4価ワクチンの導入に向けての臨床試験や生物学的製剤基準の改訂が進められているようですが,本年は,上記の3株に対してのワクチンです。

副作用について
 副作用は時系列で考えることが大切です。判定基準は,24時間まではアナフィラキシー,関連を疑う発熱・頭痛・悪寒・痙攣・四肢局所腫脹は7日まで,ギラン・バレー症候群は21日まで,血小板減少性紫斑病や肝機能異常は28日までとします。4週間を評価の上限の目安とします。

その他の知識
1)A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09について
 現在,A型ウイルスの71%が,このA/カリフォルニア/7/2009の亜型のウイルスです。世界中で分離されたA(H1N1)pdm09ウイルスの大半は,ワクチン株A/カリフォルニア/7/2009類似株であり,抗原性がほとんど変化していないとされています。国立感染症研究所の報告では,札幌市で流行したオセルタミビルおよびペラミビル耐性株でも抗原性はA/カリフォルニア/7/2009と同様であり,A/カリフォルニア/7/2009ワクチンの効果が期待できるとされています。現在,2011年より2014年まで,A型インフルエンザウイルス対策として,A/カリフォルニア/7/2009の高増殖株X-179Aが4シーズンに渡って作製されている理由となっています。
2)A/ニューヨーク/39/2012(X-233A)(H3N2)
 A(H3N2)亜型ウイルスは豪州で流行しましたが,他の地域ではB型ウイルスと同程度に全体の20~30%となっています。2012/13シーズンから,ほとんど抗原変異を起こしていないとされています。一方,このA(H3N2)亜型ウイルスは,孵化鶏卵において増殖した場合はインフルエンザウイルスのHA蛋白(hemagglutinin,haemagglutinin: インフルエンザウイルスなどウイルス表面に存在する糖蛋白)のヒト細胞膜のシアル酸との結合部位が,哺乳動物型から鳥型を認識するようにアミノ酸の置換が生じ,抗原性を変化させることが知られています。このために,ワクチン開発においては,多くのA/ビクトリア/361/2011類似株の中から孵化鶏卵による変化の軽微なワクチン株としてワクチン製造株A/テキサス/50/2012(X-223)も選定されています。日本でインフルエンザウイルスに対する3価ワクチンの1つとしてとして選定されているA/ニューヨーク/39/2012 (X-233A)は,孵化鶏卵馴化での抗原性変化の影響を受けてる傾向がありますが,本年の經過を評価することが大切なようです。今後も,A/テキサス/50/ 2012(X-223)ワクチン株などとの効果の比較が継続されるのでしょう。

2014年12月1日(月)先勝
教授 松田直之

Q2: グラム陰性球菌の検出で考えること

グラム陰性球菌をグラム染色で検出した際には,①ナイセリア,②モラクセラ,③ベイヨネラ,④アシドアミノコッカス,⑤メガスフェラの5菌属を考えます。①ナイセリア,および②モラクセラは,酸素のない状態では繁殖できない好気性菌であり,③ベイヨネラ,④アシドアミノコッカス,⑤メガスフェラの3菌属は酸素があるところでは発育できない嫌気性菌(偏性嫌気性菌)と呼ばれている細菌で、病原性は低く人の体内で常在している細菌です。
 ナイセリア属は,双球菌であり,双子のコーヒー豆のような形です(N. elongataのみ桿状)。1876年に淋菌を発見したドイツの菌学者アルベルト・ナイサー(Albert Neisser)の名前に由来して命名されています。ナイセリア属は23種が同定されていますが,①淋菌 Neisseria gonorrhoeae,②髄膜炎菌 Neisseria meningitidis,③Neisseria lactamica,④Neisseria siccaがヒトに感染性の高いナイセリアです。髄膜炎や敗血症性ショックとして問題となります。その他,N. cinerea,N. subfleva,N. canis,N. mucosa,N. elongataは,咽頭に存在します。これらが,Moraxella catarrhalisと判定が難しいものです。Niseria cinereaが,鼻咽頭に存在する比率は,1才以下の小児では40%程度,成人では4%,小児では結膜炎の原因ともなるようです。グラム陰性双球菌を見つけた場合は,このようなナイセリアやモラクセラに注意して下さい。Neisseria については,血液と髄液の評価が必要です。培地はチョコレート寒天培地,コロニーは0.5-2mm,オキシダーゼ陽性,スーパーオキサイド消去活性試験などを評価します。一部の微生物は,酸化力を有する生成物を抑制するために,カタラーゼ,グルタチオン還元酵素,スーパーオキシドジスムターゼなどを産生します。淋菌 Neisseria gonorrhoeaeは,これらのスーパーオキシド分解酵素の産生能が高く,スーパーオキサイド消去活性試験で強陽性となります。

2014年12月13日(土)先勝
教授 松田直之

Q3: 髄膜炎疑いで留意すること

 発熱,意識障害,項部硬直の3つの症状を髄膜炎の3徴としますが,発熱のみでこの全てが揃わないうちに,髄膜炎も疑って診療に当たることが大切です。これらが認められる場合には,血液培養検査に加えて,髄液検査を行います。採取された髄液に対しては,①初圧,②細胞数と分画,③髄液糖/血糖比,④髄液蛋白量,⑤グラム染色,⑥細菌培養を評価して,データを確認し,カルテにデータ記載と,各内容に対してアセスメントを記載して下さい。細菌性髄膜炎の起炎菌は,年齢や状況により変化することを,国家試験の際にもも勉強していると思います。年齢などとグラム染色の結果とを組み合わせることにより,起炎菌を推定できる可能性があることが特徴です。髄液検査のコツとポイントは,脊椎麻酔に準じますが,時期を見て,このホームページ「研究医の進化」にUPします。安全管理の対象して,しっかりした手技を救急科専門医や麻酔科指導医や神経内科専門医の先生から教えてもらって下さい。
髄膜炎の起炎菌.jpg
 さて,成人の髄膜炎の主体は,肺炎球菌であり,次に髄膜炎菌であることを覚えていると思います。成人に認められる髄膜炎菌は,低温で死滅するために,髄液検体を冷蔵庫保存してはいけません。一方,小児では,インフルエンザ菌による髄膜炎に注意するべきですが,成人では一般に検出率が高くありません。また,一般病棟やICUで,脳外科手術や脳室・腹腔内シャント術後の患者さんの髄膜炎を疑う場合には,院内発生の髄膜炎としてブドウ球菌やグラム陰性桿菌感染を考え,MRSAやMRSEや緑膿菌の可能性に注意します。

2014年12月1日(月)先勝
教授 松田直之

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