炎症に合併したDIC治療

 炎症期には,組織因子(TF:tissue factor)の転写段階からの産生増加により,凝固のカスケードが活性化し,活性化第Ⅱ因子である「トロンビン」が活性化する。このトロンビンの活性上昇に伴い,血管内皮や血小板で制御しているAT(アンチトロンビン)活性が低下する。トロンビンとATは,TAT(トロンビンーアンチトロンビン複合体)に変換され,TATへの変換と血管透過性亢進による間質への異動により,AT活性が低下する。また,トロンビン活性上昇の結果として,血小板に存在するトロンビン受容体(PAR)を介して,血小板数が急激に減少する。血小板についてのモニタリングは,急性期DIC診断基準に準じて,絶対数のみではなく,12時間における減少率で評価する。炎症状態で進行するDICの治療タイミングは,血小板数低下とAT活性低下を基盤とするのが最も良い(近未来に証明される)。トロンビン活性の制御,DIC進行抑制,血小板沈着抑制および血管内皮保護の治療として,①トロンボモジュリン,②ATⅢ製剤を使用する。

■ ATⅢ製剤:ATⅢ製剤 500単位+添付液10 mL
ATⅢ製剤は他施設のように,短時間投与で使用してはならない。EMICUのルーティンな採血検査時間はAM6:00である。この時間に合わせて,AT投与を行うわけではない。臨床研究の多くは,AT製剤のボーラス投与時刻をAT活性の測定時刻の直後や直前としていない問題がある。一方,2005年4月に松田が考案したATⅢ持続投与法により,AT活性>70%を目標として,AT活性の時系列変化を観察できる。さらに,AT製剤のピーク濃度を抑制できるために,出血合併症を減少できる可能性がある。通常は,ATⅢ製剤を上述の方法で1.2 ml/時で持続投与すると,1日量として1500単位(+ 添付液30 mL)を投与することになる。AT活性>70%を満たさない場合には,投与速度を増加させ,1日量として3000単位を目標とする。一方,炎症期において,1日量1500単位をいきなり中止してはいけない。1日量1000単位〜500単位とAT活性を評価しながらテーパリングする。
*輸血であるので電子カルテでの輸血オーダーも必要。

■ トロンボモジュリン:リコモジュリンr® 380 U/kg +生食50 mL 計50 mL
(30分で投与)
腎機能Ccr > 30mL/分の場合,1日1回380 U/kgを生理食塩水50 mLに希釈し,30分で点滴静注する。急性腎傷害としてCcr ≦ 30 mL/分と予測される場合,炎初期にCHFを併用する可能性があり,130 U/kgに減量する。

指針設定
名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 
2015年4月1日〜 東 倫子・田村有人(外来医長)・松田直之(EMICU部長)
2016年4月1日〜 東 倫子・海野 仁(病棟医長)・松田直之EMICU部長






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