循環作動薬

基本指針

 循環作動薬は,心血管機能評価と病態生理学的解釈に基づいて,最小で最大の効果を得られるように,集中治療における安易な使用を慎む。ドパミン(DOA)とドブタミン(DOB)の臨床使用においては,薬理学的やつ病態生理学的に不適切な使用を避ける。アドレナリン作動性β受容体刺激については,ドパミン(DOA)とドブタミン(DOB)の使用を厳格な使用とし,使用する場合にはDOAは3μg/kg/分から,DOBは1μg/kg/分から緩徐になじませていく方法をマニュアルとする。炎症性病態では,心筋細胞や心房筋細胞に細胞内Ca過負荷の不均等を生じる事がよく知られており,DOAやDOBにおいては心拡張不全・不整脈・多臓器繊維化などの副作用を避けるために5μg/kg/分から開始してはならない。
 DOAやDOBは,アドレナリン作動性β2受容体を介した血管拡張薬と陽性変時作用(頻脈・催不整脈)に注意する。アドレナリン作動性β1受容体を介した陽性変力作用は炎症期には極めて減弱し,むしろ細胞内Ca過負荷による心拡張不全を誘導する危険性に注意する。小児における心拍増強を期待する場合は,PDEⅢ阻害薬(ミルリノン)を含めてDOBの使用を検討する。DOAやDOBの使用法は,病態生理を間違えると特にショック離脱を困難とするため,使用するときは使用する解釈をカルテに記載する。
 一方,炎症期に低下しやすい体血管抵抗の調節は,ノルアドレナリン持続投与(0.05~0.2μg/kg/分 )の段階的投与量増加で行なう。難治性敗血症性ショック,肺血栓塞栓症および肺高血圧症においては,バゾプレシン(成人のみ:1.5 単位/時あるいは2.0 単位/時)の併用を考慮する。心機能低下例にβ受容体刺激を行う際には,エピネフリンチャレンジテスト(当教室考案 2013年4月)を行い,エコー記録をエコー器に残すとともに,両心機能の評価をカルテ記載として残す。難治性敗血症性ショック,および難治性血流分布異常性ショックに関しては,救急科およびEMICUスタッフおよび教授等への緊急連絡とし,早急なショック離脱の達成することを目標とする。。

A. 体血管抵抗維持:血管収縮作用を期待する場合
■ ノルアドレナリン:ノルアドレナリン3 mg(1 mg 3A)+生食47 mL 計50 mL
(投与量が多い場合は,ノルアドレナリン6 mg+生食44 mLの希釈)
■ アドレナリン:ボスミン3 mg(1mg 3A)+生食47 mL 計50 mL
■ バソプレシン:ピトレシン20単位+生食19 mL(希釈:1 mL/単位) 計20 mL

B. 体血管抵抗減少:血管拡張を期待する場合
■ ニカルジピン 血管系Ca拮抗薬(高血圧抑制):ペルジピン原液 1 mg/mLを持続投与する。使用量:1-μg/kg/分

C. 陽性変力作用:少量よりなじませるように使用する
■ ミルリノン PDEⅢ阻害:ミルリーラを各自で調整。 0.5μg/kg/分から開始とする。
頻脈が生じる可能性が高い。ミルリノンによる頻脈に対しては,ジルチアゼムを第1選択とする。
■ ドブタミンβ受容体刺激:ドブポンシリンジ          計50 mL 1μg/kg/分からのみ開始
■ ドパミン ドパミン受容体及びβ受容体刺激:イノバンシリンジ  計50 mL 3μg/kg/分から開始
これらは,安易に持続投与量を増減させていはいけない。反応の安定化まで,20分以上の間隔をおく。

D. 陰性変時作用:心拍数を低下させる場合
※ 使用前後での脈拍数の変化と血中乳酸値の変化をモニタリングし,カルテに記載する。
■ ランジオロール β受容体遮断:オノアクト150 mg(3V)+生食50 mL 計50 mL ※心拍数調節として,2 - 7 μg/kg/分で持続投与とし,心拍数90回/分以下を目標として,持続投与量を減量させる。ランジオロールの併用にあたっては,内因性カテコラミンの程度(血中カテコラミン3分画)を評価するとともに,鎮痛と鎮静の手法に基づいて交感神経緊張の適正化を計ることを原則とする。調節の難しい交感神経緊張に対する適応となる。
■ ジルチアゼム 刺激伝導系Ca拮抗薬(頻脈抑制):ヘルベッサー 150 mg(3V) +生食50 mL 計50 mL 使用量:1-5 μg/kg/分
■ アミオダロン:アンカロン注150 mgの添付文書を参照。炎症性頻脈における適応とする。

指針設定
名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 
2015年4月1日〜 東 倫子・田村有人(外来医長)・松田直之(EMICU部長)
2016年4月1日〜 東 倫子・海野 仁(病棟医長)・松田直之EMICU部長






センター連携教育体制